四国八十八 札所のご紹介【第10番】
   
  

 四国八十八箇所霊場の第十番札所は、切幡寺(きりはたじ)。徳島県阿波市市場町切幡字観音にある、本尊が千手観世音菩の高野山真言宗の寺院です。九番札所から約5Kmのところにあります。

 弘仁6年(815年)、切幡の貧しい山麓にハタを織る若い女がいました。たまたま弘法大師が立ち寄って喜捨を乞うたところ、女はこころよく接待をしてくれました。

 それから7日後、ここで修法していた弘法大師は、再び女のもとへ行き、綻びた衣を繕うための布切れを所望したところ、女は今織っていた布を惜しげもなく切り裂いて差し出してくれました。

 弘法大師は、この厚意に感動して、何かお礼をできないかと望みを尋ねたところ、平城太上天皇の変(薬子の変 )に関係し島流しとなった父、生まれる子どもまでが咎を受けぬよう女の子を清水の観音様に祈願して生んでくれた母、その亡き父母のために、観音像をつくってお祀りたいと願われたそうです。 

 弘法大師は強く心を打たれ、その家に留まり、千手観音像を刻み、女を得度(とくど ※1)させて灌頂(かんじょう ※2)を授けました。すると女はたちまち即身成仏(※3)して観世音菩薩に化身しました。 

 そこで弘法大師は、このことを時の嵯峨天皇に伝え、勅願(ちょくがん ※4)により堂宇を建立し、弘法大師の刻んだ千手観音を南向きに、女が即身成仏した千手観音を北向きに安置し、本尊として開基し、得度山切幡寺とされました。

 潅頂院の院号も、ご本尊が2躰あるのも、この縁起に由来されています。

 境内にある多宝塔からの素晴らしい展望は、是非一度ごらんになってみてください。

 

 

 

※1  得度: 仏教における僧侶となるための出家の儀式

※2  灌頂: 頭頂に水を灌ぎ、正統な継承者とする為の儀

※3   即身成仏: 仏教で人間がこの肉身のままで究極の悟り
                        を開き、仏になること

※4   勅願: 勅命による祈願・天皇の祈願 






 
めぐりやすい八十八ヶ所 四国へんろ
(出版社:満願寺教化部刊)
より引用させて頂いております。

     
     
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